【介護職向け】腰部脊柱管狭窄症の方への“安全な歩行・移乗介助”のコツ理学療法士が伝えたい、現場で本当に役立つポイントとは?

「立ち上がったあとは、すぐに歩けない…」
「突然ふらついたりして、ヒヤッとすることがある…」

高齢者施設やご家庭で、こういったケースに出会うことはありませんか?
もしかしたらその方、**腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)**の症状があるかもしれません。

今回は、現場で働く介護職の皆さんへ向けて、
**「脊柱管狭窄症の方を安全に介助するポイント」**を理学療法士の視点からお伝えします。


腰部脊柱管狭窄症ってどんな病気?

「脊柱管」とは、背骨の中を通る神経の通り道です。
年齢とともにこの管が狭くなり、神経が圧迫されることで、脚のしびれ・痛み・動かしづらさなどの症状が出るのが「脊柱管狭窄症」です。

特徴的な症状はこんな感じ:

  • 立っていたり歩いていると足がしびれてくる
  • 少し休むと症状が和らぐ(=間欠性跛行(かんけつせいはこう)
  • 前かがみの姿勢だとラクになる
  • 立ち上がってすぐ動き出せない

とくに高齢の方に多く、介護現場では非常によく見られる疾患です。


よくある介助の「困りごと」と失敗例

☑ 立たせたあと、すぐに「歩いてください」と声をかける

➡ 足がしびれて動かせない状態で歩かせようとすると、転倒のリスクが高まります。

☑ 背中を無理にまっすぐにさせようとする

➡ この疾患の方は、少し前かがみの姿勢のほうが痛みが出にくいです。

☑ 「早く動いて」と急がせてしまう

➡ 本人は「動きたいのに動けない」状態。焦らせると不安やパニックを引き起こします。


理学療法士が伝えたい!安全な介助の3つの工夫

①【“立ってすぐ”は焦らせない】

  • 立ち上がってすぐに動けないことは多いので、
     「立ったまま5秒くらい落ち着いてから歩きましょう」などと声をかけましょう。
  • 杖や歩行器がある場合は、すぐ持てる位置に置くことも大切です。

②【“前かがみ”を受け入れる】

  • 背筋を伸ばさせるよりも、やや前傾姿勢をキープするほうが安全で動きやすいです。
  • 手すりの位置は「前め」になるように調整すると良いです。

③【環境づくりもサポートの一部】

  • 廊下や移動動線に腰かけられる椅子を設置すると、休憩しやすく安全です。
  • 立ち上がる場面では、椅子やベッドの高さを調整し、無理のない動作にします。

まとめ:安心・安全な介助のために

脊柱管狭窄症の方の介助では、
「待つこと」「無理に動かさないこと」「前かがみを受け入れること」
この3つが大切なキーポイントです。

症状の背景を少し理解するだけで、より安心・安全な介助につながります。
私たち専門職が、現場で働く皆さんにこうした情報を届けることで、
利用者さんにとっても、介助する人にとっても、安心できる環境をつくっていけると信じています。

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