✅ はじめに
「いつもフラフラして立ち上がりが怖い」
「つい健側の手を引っ張ってしまうけど、これって正しいの?」
片麻痺の方の車椅子移乗介助には、**“どこをどう支えるか”**という知識がとても重要です。
この記事では、理学療法士の視点から、移乗介助時の「支え方」の基本とコツをお伝えします。
✅ 片麻痺の方の特徴を理解する
脳卒中などで片麻痺になると、片側の手足に以下のような変化が起こります。
- 筋力低下・感覚鈍麻(例:足元がわからない)
- バランスが取りづらい(支持面が狭くなる)
- 空間認知の障害(身体の片側を忘れやすい)
つまり、「立ち上がる」「向きを変える」「体重をかける」といった動作がとても不安定になります。
✅ 基本の支え方:麻痺側から介助に入る
片麻痺の方の支援で原則となるのは、
👉 **「麻痺側から支える」**ということ。
なぜなら、
- 麻痺側は支えにならない=外から支えが必要
- 健側(動く側)は本人が操作できる=スペースを空けておくのが良いからです。
💡例:左片麻痺の方の場合
→ 介助者は左側に立ち、麻痺側の体幹・膝・骨盤を安定させる
✅ 支えるべき3つのポイント
① 骨盤(お尻)を支える
- 骨盤が後ろに倒れていると、立ち上がりの初動ができません。
- 前傾を促すように「腸骨(お尻の少し上)」あたりに手を添えると◎
② 麻痺側の膝を軽く押さえる
- 麻痺側の膝が抜ける(ガクッと折れる)と転倒に直結します。
- 軽く手のひらで押さえ、膝折れを防ぐサポートを。
③ 体幹(脇〜肩)を“支える”意識で
- 肩を引っ張るのはNG。本人の重心バランスを崩します。
- 脇や体幹に手を添えて、「持ち上げる」のではなく「支える」姿勢が基本です。
✅ よくあるNG介助
❌ 健側から引っ張る
→ 本人が頼れる方を奪ってしまい、姿勢が崩れやすい。
❌ 両脇から抱え上げる
→ 利用者の重心が浮き、足が地に着かない=転倒のリスク。
❌ 手を持って引く
→ 麻痺側の肩を脱臼させる危険あり(亜脱臼)。
✅ 声かけも“支え”の一部
支え方は「手で支える」だけではありません。
適切な声かけも、移乗動作の安定に直結します。
例:
- 「いまから立ちますよ」→動作のタイミングを合わせる
- 「右足を少し前に出しましょう」→健側の活用を促す
- 「お尻を後ろにしましょう」→座位の安定を確認する
✅ まとめ
片麻痺の方の移乗介助では、**“どこから支えるか” “どう声をかけるか”**がとても大切です。
🔑 ポイントは…
- 麻痺側から支える
- 骨盤・膝・体幹を安定させる
- “持ち上げる”のではなく、“支える”意識を持つ
こうしたちょっとした視点が、利用者の安心と安全につながります。
✅ 筆者プロフィール
理学療法士|介護老人保健施設勤務|主任
運動器認定理学療法士/介護支援専門員/福祉住環境コーディネーター2級
介護現場での「わからない」「不安」を少しでも解消できるよう、情報発信しています。
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