はじめに
「なんでこんなに忙しいのに実習生の指導をしなきゃいけないの?」
医療・介護の現場で働いていると、そんな声を耳にすることがあります。
確かに現場は常に多忙。限られた人員と時間の中で、指導という“業務外”に見えるものが重荷に感じるのも当然です。
ですが、実習生の受け入れは「現場の負担」ではなく、「未来への投資」であり、現場を良くするチャンス」でもあります。
この記事では、理学療法士として実習指導に関わってきた経験から、
病院や施設が実習生を受け入れ、指導することの意味とメリットをお伝えします。
実習生を受け入れる5つの理由
① 教育機関と連携する「社会的責任」
私たち専門職は、教育機関(大学・専門学校など)と連携しながら、
次世代を育てていく責任があります。
- 地域の人材育成を支える立場にある
- 実習施設としての信頼は、施設の「ブランド力」にもつながる
- 実習を通して、卒業後に就職してくれるケースもある
病院や施設が実習先として協力することで、社会全体の人材育成サイクルに参加していると言えるのです。
② 教えることで“自分の学び”が深まる
「教える=教わる」ことでもあります。
実習生に説明するためには、自分の技術や判断を言語化し、整理する必要があります。
この過程で、自分が無意識にやっていたケアや技術を見直し・再確認できます。
- なぜそうしているのかを考える
- エビデンスに基づいた指導を意識する
- 後輩や新人への説明力もアップする
教えることは、自身の専門性を研ぎ澄ませるトレーニングにもなります。
③ チームの雰囲気をよくする効果もある
実習生が現場に入ると、自然とチームの空気が変わります。
- 挨拶や言葉づかいに気を配るようになる
- 普段のケアの振り返りが活発になる
- 若手職員が「教える側」として成長できる
実習生の存在が、現場の学び直しとコミュニケーションを活性化させる起爆剤になることも少なくありません。
④ 将来の人材確保につながる
実習中に良い印象を与えられれば、そのまま採用につながる可能性もあります。
- 実習で現場を知っている分、即戦力になりやすい
- 入職後のギャップが少ない=離職率の低下にもつながる
「良い指導を受けた」「ここで働いてみたい」と思ってもらえることは、未来の採用活動への大きなアドバンテージです。
⑤ 実習の質=施設の教育力と信頼性の証
教育機関や学生にとって、実習の内容や体制は非常に重要です。
- 指導者が丁寧で、対応が良い
- 明確な方針とフィードバックがある
- 実習計画がしっかりしている
こうした評価は、そのまま施設への信頼につながり、今後の実習依頼や紹介にも影響します。
教育力のある施設=現場力があると見なされるのです。
実習生指導が「現場の改善」につながる理由
実習生からのレポートや質問は、ときに現場の盲点を教えてくれます。
- 「なぜこの順番で介助するのですか?」
- 「どうしてこの人だけトランス方法が違うのですか?」
当たり前にやっていることを客観的に見直せるきっかけになり、リスク管理やケアの質向上にもつながります。
指導=面倒ではなく、“未来への投資”
確かに、実習生の指導は手間も時間もかかります。
でも、それは以下のような価値を持っています:
- 自分のスキルと知識の棚卸し
- チームの成長と活性化
- 次世代の専門職を育てる社会貢献
- 将来の採用にもつながる可能性
そして何より、
**「自分も誰かに育ててもらった」**という原点に立ち返る機会でもあります。
まとめ
病院や施設が実習生を受け入れ、指導する理由は――
それが「未来の仲間を育てること」だからです。
指導を通して、自分の成長にもつながり、現場全体の意識やケアの質も向上します。
一人ひとりの実習生との関わりが、次世代の現場力をつくっていく。
それこそが、今、実習指導に関わる大きな意義です。
今日あなたが教えた学生が、5年後の現場を支えるかもしれない。
そう考えると、指導の時間もまた、意味のある時間に感じられるはずです。
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